抄録
市販歯科用陶材, キャスタブルセラミックスの熱拡散率をレーザーフラッシュ法により測定した.すなわち, 真空に保った電気炉内の試料を加熱しながら, 連続的に室温から700℃の温度範囲で, ASTMの規格にしたがい, 熱拡散率を測定した.その結果, アルミナを多く含むコア陶材では温度依存性が高く, 室温では熱拡散率が1.9mm2s-1と高いが, 700℃では1.0mm2s-1であった.ここで調べたその他の陶材では, 温度依存性は低く, 全ての温度域で, 0.5〜0.8mm2s-1であった.また, キャスタブルセラミックスでは0.4〜0.8mm2s-1であり, 温度依存性は低かった.そして, 結晶化することにより熱拡散率が変化した.加熱/冷却過程で生じる材料内の熱応力のモデル計算から, 熱応力は材料の熱膨張係数, 弾性率に比例し, 熱拡散率に反比例することが明らかにされた.以上のことから, 組成, 組織を抑制して陶材の熱拡散率を低くすることにより, 高い使用応力を発生できる歯科用セラミックスが開発できることが示唆された.