抄録
超弾性チタンニッケル合金線を応用した歯列弓拡大装置の矯正力について, コバルトクロム合金線によるクアドヘリックス型の装置と比較検討した.まず, 713K, 1.8ksで一次熱処理を行った後, 753Kあるいは793Kで1.8ksの二次熱処理を施すことにより形状記憶処理を施し, 変態点測定試験ならびに矯正力測定試験を行った.その結果, コバルトクロム合金試料では荷重が変位に比例して直線的に増減したが, チタンニッケル合金試料では超弾性による荷重変化の小さい領域が認められた.また, チタンニッケル合金試料による荷重の大きさは, コバルトクロム合金による場合と同レベルにあり, 753Kで二次熱処理を行った方が荷重ヒステリシスが小さかった.従って, チタンニッケル合金を歯列弓拡大装置に応用することにより, 超弾性による持続的で変化の少ない安全で効果的な矯正力を作用させることが可能になると考えられる.