発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
歩行開始期における母子の共発達 : 子どもの反抗・自己主張への母親の適応過程の検討
坂上 裕子
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 14 巻 3 号 p. 257-271

詳細
抄録

本研究では2歳児の母親25人に半構造化面接を行い,子どもの反抗や自己主張の本格化に対する母親の適応過程を,グラウンデッド・セオリーの手法を援用し,検討した。子どもの反抗や自己主張の本格化を,成長の現れと捉えていた母親もいたが,母親(特に第1子の母親)の多くは苛立ちや困惑を経験していた。大半の母親は,反抗や自己主張が激しい時やそれらに意図性が窺える時,時間的・精神的余裕がない時に,自身の意図に子どもを強庄的に従わせる,自己の視点に焦点化した対応(怒る,突き放す,叩く等)をとることがあると答えた。しかしそれらの対応は母親に,視点の揺れ(子どもの視点から自身の対応や子どもの行動を捉え直すこと)を生じさせることがあった。母親は,以下のことを通じて子どもの反抗や自己主張に適応していったと考えられた:①理解力の向上や興味・関心の拡大といった子どもの発達的変化を利用しながら,互いの理解や譲歩に基づく対立の解決方法を試行錯誤を経て見出すこと,②子どもへの期待や対応を我が子の発達の実情や個性に合うよう修正することで,自己の視点に焦点化した状態から脱すること,③環境に工夫を図ることや自身の苛立ちを統制する方法を見出すことで,自己の視点に焦点化した状態が生じるのを抑制すること。以上の結果より,子どもが反抗期を迎えた時の母親の中心的経験とは,親である自己の視点と子どもの視点の調整を図ることであった,と結論づけられた。

著者関連情報
© 2003 一般社団法人 日本発達心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top