発達心理学研究
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高齢者の生活において外出が持つ意味と価値 : 在宅高齢者の外出に同行して
松本 光太郎
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2005 年 16 巻 3 号 p. 265-275

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抄録

本研究では, 在宅高齢者の外出時に著者自身同行し, ともに歩きながら, 彼/彼女にとっての外出の意味と価値を明らかにすることを課題とした。これまでの高齢者研究においては, 行為主体のある断面を切り取った構成概念間による機能論的な現象説明が常であった。本論では, 日々の何気ない行為にこそ高齢者の生活において大切な日常性が潜んでいると考え, 外出時の進行中の行為そのものに注目をした。具体的には, 11人の在宅高齢者と一緒に歩く同行調査を行い, 調査協力者の外出時における行為を記述した。結果では, 外出時の行為について記述された具体的なエピソードを検討し, 1)外出前の準備, 2)様々な事物とのかかわり(もの, 場所, 環境, 状況の中の人, 自身の身体)という外出時における行為形式を見出した。そして, 外出時に起こっていることとして, 1)見たり, 聞いたり, 感じたりする行為/体験が連なっていく様態を「出会い」(Reed, 1996a/2000)の連続として理解し, 2)「今ここ」の出会いには過去の経験等が入り込んでおり, 出会いを取り囲む機制を理解するために「包含」という言葉を提示した。最後に, 外出時において様々な資源との出会い, つまり包含の連なっていく過程を, 高齢者の日々の生活における外出することの意味と価値として結論づけた。

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© 2005 一般社団法人 日本発達心理学会
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