発達心理学研究
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幼児における空間参照枠の発達 : 経路説明における言葉と身振りによる検討
関根 和生
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2006 年 17 巻 3 号 p. 263-271

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抄録
本研究では,幼児が経路説明時に産出する発話と自発的な身振りから,どのような空間参照枠の使用が示唆されるか,また,それらが加齢に伴いどのように変化していくのかということを検討した。公立保育園に通う幼児55名に保育園から自宅までの経路説明を求めたところ,加齢に伴い身振り量,発話量が増加し,ランドマークや左右への言及数が多くなることが明らかにされた。また,身振りの形態的特徴を観察したところ,4歳児は,帰宅経路の方向に身体を定位させて身振りを産出する者が多く,手を肩よりも上に上げる割合が多かった。一方,6歳児では,実際の帰宅経路とは関係のない方向で身振りを産出する者が多く見られ,腕の上げ下げが最も多かった。また,俯瞰的な視座から経路を描写するサーヴェイ・マップ的身振りの産出が5歳児,6歳児でみられた。こうした身振りの形態的特徴から,4歳児では自己の身体を原点とした参照枠を,6歳児では経路上のランドマークに基づく参照枠を主に使用していることが示唆された。以上の結果から,幼児期には参照枠が自己中心的参照枠から固定的参照枠へと変化していくことが示唆された。最後に,参照枠の発達的変化に影響を与える要因として,言語的符号化能力と通園経験による学習効果が議論された。
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© 2006 一般社団法人 日本発達心理学会
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