抄録
日本語話者の幼児は助数詞をいつ,どのように理解していくのか,という問題を明らかにするため,数えられる対象が動物か非動物かという存在論的区別と助数詞カテゴリーの関連についての幼児の理解に注目し,幼児における助数詞の理解の発達的変化を検討した。3歳から6歳の幼児81名を対象に,実験者が操るパペットが,絵カードに描かれた事物をわざと誤った助数詞を用い数えてみせ,幼児がその誤りを指摘し,適切な助数詞を用いて修正できるかをみる「エラー検出法」を用い,幼児における主要な有生助数詞,無生助数詞の理解を調べた。その結果,5歳半以下の幼児は,パペットの助数詞の誤りをほとんど指摘できなかったのに対して,年長児(5歳半〜6歳半)は,パペットが存在論的カテゴリーの境界を越える誤った助数詞を用いた場合に,特にその誤りを指摘できた。また,パペットの誤りを修正する際や,適切な助数詞を選択肢から選択する課題においても,年長のみで,存在論的カテゴリーの境界を越える助数詞の誤りが少ないという傾向が認められた。以上の結果から,幼児の助数詞カテゴリーに関する理解が5歳ごろから始まり,その初期において,幼児が対象の存在論的区別に関する知識を手がかりとして利用していることが示唆された。また,各助数詞カテゴリーの獲得順序について,基礎レベルのカテゴリー名と対応のある助数詞の獲得が早いという可能性も示唆された。