発達心理学研究
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歩行開始期における親子システムの変容プロセス : 母親のもつ枠組みと子どもの反抗・自己主張との関係
高濱 裕子渡辺 利子坂上 裕子高辻 千恵野澤 祥子
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2008 年 19 巻 2 号 p. 121-131

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抄録

歩行開始期の子どもをもつ母親の行動=思考=感情システムにおける変化を,子どもの反抗・自己主張と母親のもつ枠組みとの関係から検討した。対象は3組の母子で,子どもは全て第一子てあった。目的は面接調査(21か月齢〜36か月齢)を通して,親子システムに出現する変化のプロセスを時系列に記述することであった。子どもの反抗・自己主張の強まりとともに,母親はそれらを統制しようとした。反抗・自己主張のピーク時には統制は困難となり,母親の心理的負荷は増大した。やがて子どもの発達的変化(言語発達,基本的生活習慣の確立)や子どもの言動の意味の読み取りの熟達化,社会的資源の活用によって心理的負荷が軽減され,母親は新たな行動をとるようになった。事例ごとに問題は異なるが,システムの変化のパターンには共通性がみられた。すなわち,当初は不明確であった母親の枠組みが明確化し,反抗・自己主張のピーク時には複数の枠組みが絡みあって母親を締めつけた。母親の心理的負荷の軽減と枠組みのゆるみとは連動し,その結果問題から焦点をずらすことや子どもの言動を異なる側面からとらえることが可能となった。これらは母親の行動=思考=感情システムの再組織化プロセスとして考察され,母親のもつ枠組みと日本の文化的特徴との関係も議諭された。

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© 2008 一般社団法人 日本発達心理学会
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