発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
乳児の手の活動における機能的左右非対称性 : 出生から1歳までの縦断研究
橘 廣
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 20 巻 1 号 p. 55-65

詳細
抄録

本研究では,乳児の手の活動における機能的左右非対称性について検討することを目的とした。研究1では,機能的左右非対称性の出現状況を検討するために,1ケースの出生から1歳までの,養育者の自然観察による縦断研究を行った。結果は,リーチングの観察される以前に,手指操作の基礎となるような左右の手の機能的非対称性が観察された。その機能的な差異は,リーチングの優位性とは関係なく観察期間を通じて一貫しており,右手優位は継時性,左手優位は空間性が必要とされる動作で観察された。また同日の種々の手指活動においては,高度の技能を要し操作性の高い活動であるほど,一側化が顕著にみられた。研究2では,同時期に優位な手が異なっていた,指さしとパッティングの優位性の変化を検討するために,約1ヵ月間使用手の頻度調査を行った。その結果,指さしは,独立歩行開始が観察された日より優位な手に変化がみられたのに対し,パッティングの頻度は右手優位で一貫していた。以上の結果から,技能を含む操作性の高さが一側化に重要な要因となることが示唆された。操作性の高さおよび半球機能分化の時期について考察された。

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本発達心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top