本研究では子どもにおけるお金のやりとりに着目し,お金に媒介されて生じる親子関係の発達的変化を捉えることを試みた。大阪の小学生134名,中学生225名,高校生173名を対象に,お金のもらい方・使い方,それをめぐる価値規範や親子関係・友だち関係について質問紙調査を実施した。分析の結果,子どもの経済力の増加,市場経済への参入による購買活動の拡大とお金の自力での獲得,親の権威のもとでのお金のやりとりから友だち関係に重きを置いたお金のやりとりへの移行,親から与えられた価値規範からの自立など,子どもの親からの自立過程や社会的自我の発達過程が明らかにされた。これにより,お金は商品交換を媒介するだけでなく,文化的道具として規範的に親子関係や友だち関係を媒介し,その媒介構造の発達的変化から,子どもの発達や自立過程が生じることを分析することが可能であることが示された。