発達心理学研究
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Print ISSN : 0915-9029
性別の変更を望む我が子からカミングアウトを受けた母親による経験の語り直し
荘島 幸子
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2010 年 21 巻 1 号 p. 83-94

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抄録

本研究は,身体に対する強烈な違和感から,身体的性別を変更することを望む我が子(身体的性別女性,A)から「私は性同一性障害者であり,将来は外科的手術を行い,身体的に男性になる」とカミングアウトを受けた母親(M)による経験の語り直しに焦点を当てた事例研究である。子からカミングアウトを受けて2年が経過した第1回インタビュー時に,「性別変更を望む我が子を簡単には受け入れることができない」と語っていた母親1名に対し,約1年半の間に3回のインタビューを行った。分析の視点は,【視点1:Aについての語り直しの状況】,【視点2:構成されるMの物語】,【視点3:語りの結び直し】の3つであった。A-Mの関係性は,3回のインタビューを経て良好なものへと変化していた。分析の結果,Mが語り直しのなかで,親であることを問い直しながら自らの経験を再編し,M自身の人生の物語を再構成していく過程が明らかにされた。語りを生成する際には,他者(周囲の他者/聞き手としての他者)が重要であることが見出された。考察では,自責の念や悔いといった語り直しから母親の生涯発達を捉え,従来の段階モデルを越えた議論を行った。また,Mの語り直しを促進させ,親物語の構成を下支えする1つの軸となる役割を担う存在として聞き手を位置づけた。

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© 2010 一般社団法人 日本発達心理学会
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