抄録
気持ちや感情は,出来事の重要な要素であり,司法場面においても有用な情報である。本研究の目的は,子どもの安全,保護という観点から,子どもが気持ちをどのように表現するのかを発達的に調査することであった。幼児,小学校1年,2年,4年,6年の計127人に10の人形劇(なくした眼鏡を見つける,無理矢理遊びに誘われる,理不尽にどなられる等)を示し,登場する人形の気持ちについて質問した。その結果,幼児においては1/3の反応が"分からない"であったが,年齢発達ともに,内的状態(悲しい等)や,行動(〜している),期待(〜したい),疑問(どうして〜になったのか)などに言及することで,人形の気持ちを表現するようになった。全体として,ポジティブな気持ちよりもネガティブな気持ちを表す表現の方が多様であり,また,性差が見られた。これらは先行研究と一致する結果である。この結果を踏まえて,司法面接(捜査面接)への適用におけるいくつかの制約について議論した。