幼児同士の関わりにおいて,ある幼児が泣いているときに,他の幼児が示す向社会的な反応は,後の共感性を予測するという点で重要視されている。これまで,泣いている他児に対して向社会的に関わりやすい幼児の特徴は検討されてきた。一方,泣いている他児の特徴や泣いている他児との関係性が,関わりかける幼児の行動に影響するかについて検討した研究は少ない。本研究では,集団保育場面において,泣いている他児の泣きやすさ,攻撃性,被攻撃性,孤立性といった特徴や泣いている他児との親密性によって,関わりかける幼児の行動に違いが見られるのかを検討する。泣いている幼児に対する向社会的な反応が生起し始め,泣きがよく生起するという理由から,2歳児を観察対象とした。室内遊び場面の行動観察を行い,泣いている他児に対する幼児の反応を記録した。一般化線形混合モデルを用いて分析した結果,泣きやすく,攻撃性の高い他児が泣いていると幼児は向社会的な反応を示すことが少なく,あまり泣かず,攻撃性の低い他児が泣いていると幼児は向社会的な反応を示しやすかった。また,泣いている他児との親密性が高いと,幼児は向社会的な反応を示しやすかった。2歳児はこれまでに受けた親和的な相互交渉や居合わせた泣きの頻度,普段の攻撃性から相手の特徴を識別し,対人評価を行い,その対人評価が相手が泣いている状況での関わり方に影響を与えていると考えられる。