2015 年 26 巻 1 号 p. 46-55
子どもは本来より広いもしくは狭い範囲でその語の意味を捉えていることがあり,徐々に大人に近づくと言われている。本研究では幼児期における感情語の意味範囲の発達的変化を検討した。2~5歳児クラスの幼児118名を対象として,ストーリーを聞かせて主人公のキャラクターの感情を尋ねるストーリー課題と,表情写真からモデルの感情を尋ねる表情写真課題を行った。正答誤答に依らず課題を通して使用した感情語の数は2歳児クラスが3,4,5歳児クラスより少なかったものの,3~5歳児クラスの間では差が見られなかった。ストーリー課題では2歳児クラスの子どもは呼び分けが曖昧で,3,4歳児クラスになると快不快の呼び分けがなされるようになり,5歳になると不快感情内についても呼び分けができるようになることがわかった。表情写真課題では2歳児クラスの時点で喜び,驚き刺激を呼び分けており,2歳児クラスで他の不快刺激と呼び分けていた怒り刺激を3歳児クラスになると他のネガティブ感情刺激といったん一括りに捉え,4歳児クラスになると怒り刺激と嫌悪刺激が,また,恐怖刺激と悲しみ刺激が同じ語で呼ばれるようになり,5歳になると各刺激がばらばらに呼び分けられ始めることが示された。このことから,感情語においても新しい語が使えるようになった後もレキシコンの再編成が続き,語の意味範囲が変化していくことが示された。