発達心理学研究
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原著
青年期における非言語性知能の発達とコホート効果
川本 哲也遠藤 利彦
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2015 年 26 巻 2 号 p. 144-157

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抄録

本研究の目的は,東京大学教育学部附属中等教育学校で収集されたアーカイブデータを縦断的研究の観点から二次分析し,青年期の非言語性知能の発達とそれに対するコホートの効果を検討することであった。分析対象者は3,841名(男性1,921名,女性1,920名)であり,一時点目の調査時点での平均年齢は12.21歳(SDage=0.49;range 12–17)であった。分析の対象とされた尺度は,新制田中B式知能検査(田中,1953)であった。青年の知能の構造の変化とスコアの相対的な安定性,平均値の変化について別個に検討を行った。その結果,知能の構造に関しては青年期を通じて強く一貫していること,相対的な安定性は先行研究と同様の中程度以上の安定性を保つことが示された。また平均値の変化については,知能は青年期を通じて線形的に上昇していくが,コホートもまた知能の平均値に対して有意な効果を示し,かつその変化の傾きに対してもコホートが効果を持つことが示唆された。ただしその効果の向きについては一貫しておらず,生まれ年が新しいほど,新制田中B式知能検査のうちの知覚に関連する領域では得点が上昇し,その上昇の割合も大きなものであった。その一方で事物の関連性などを把握する能力では,生まれ年が新しいほど得点が低下してきており,加齢に伴う得点の上昇の割合も緩やかになってきていることが示唆された。

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© 2015 一般社団法人 日本発達心理学会
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