発達心理学研究
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障害児支援を考えるモノサシとは:多義性と合理的配慮
田中 真理
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2016 年 27 巻 4 号 p. 312-321

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抄録

本稿では,障害者差別解消法元年(2016年)にあたるこの時代性のなかにおいて,障害への合理的配慮reasonable accommodationを支える観点として,大きくふたつの観点から論じた。第一に,状況−関係のさまざまなありようのなかで障害児に内在する多義性についてである。そのありようを個に帰属させるだけではなく,関係に帰属するというみかたでもとらえることは,障害児者の生活世界を理解していくにあたって必須の視点となってくることを示した。そして,発達障害児の自己理解研究を取り上げながら,この多義性を映し出すための発達研究の方法論的考察を行った。第二に,生活者としてのそのひと全体のありようは環境や個人特性との関係のなかで可変であることを,国際生活機能分類International Classification of Functioning, Disability and Healthにおける統合モデル(ICF統合モデル)に基づき論じた。ひとの発達を生物学的な固有の側面だけではなく,時代性地域性等の社会によって規定される側面の両方から理解していくなかでこそ,真の合理的配慮が遂行できることを考察した。障害児支援を考えるためには,これらふたつの観点から,時間や歴史性,地域空間的な文脈の具体性,固有で特殊ななかでの意味の解釈を問うことを可能にするモノサシの存在が不可欠であることを示した。

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© 2016 一般社団法人 日本発達心理学会
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