発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
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歩行開始期の子をもつ親と祖父母のダイアドデータの分析:育児支援頻度および回答不一致の要因
佐々木 尚之高濱 裕子北村 琴美木村 文香
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2017 年 28 巻 1 号 p. 35-45

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抄録

本研究では,ダイアドデータの特性を活かしたマルチレベル・アプローチを用いることによって,祖父母から親への育児支援頻度および祖父母と親の回答が一致しない要因を検証することを目的とした。関東と関西の都市部に居住する親(G2)とその祖父母(G1)186組が回答したデータを同時にモデル化することにより,ダイアド内の相互依存性および測定誤差を考慮しつつパラメータ推定した。その結果,祖父母側ではなく親側の要因によって育児支援頻度が規定されることが明らかになった。つまり,支援する側の年齢,時間的余裕,経済状況,健康状態にかかわらず,支援される側の需要の大きさによって育児支援頻度が増加していた。具体的には,1)G2の年齢が若い,2)G2の学歴が高い,3)G2の夫婦ともにフルタイムで就労している,4)G2の主観的健康観が低い,5)G2の援助関係満足度が高い,6)G1とG2が同居もしくは歩いて15分程度の距離に居住している,7)G3が男の子もしくは男きょうだいのみの場合に,祖父母からの支援をより頻繁に受けていた。祖父母と親の回答が一致しない要因は援助関係満足度と居住距離のみ有意であった。平均的に,親にくらべて祖父母の方が支援頻度を過小評価する傾向があり,援助関係に満足するダイアドおよび近距離別居するダイアドほど支援頻度に対する回答が一致しなくなっていた。

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© 2017 一般社団法人 日本発達心理学会
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