発達心理学研究
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算数文章題の解決課程における誤りの研究
坂本 美紀
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1993 年 4 巻 2 号 p. 117-125

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抄録

本研究は, 算数の文章題解決における誤りの原因を調査したものである。研究の目的は, lつの文章題の解決過程を下位過程に分け, 誤りが各過程のどの部分で生じるか, またそれに問題の種類による違いがあるか, という点を検討することである。課題は, 加減乗除のうち2種類を扱う文章題で, 過剰情報および単位変換の要因が操作された。調査対象は小学校4年生であった。実験1では, 問題は5つの下位過程に分けられ, 各過程ともパーソナルコンピュータによって, 教示・問題文・選択肢の提示および児童の反応の記録が行われた。その結果, 単位変換を含む問題では, 単位変換がつまずきの原因になることが多いことがわかった。また, 単位変換を含まない間題でのつまずきの原因は, 問題の状況を理解する過程にあると考えられた。実験2では紙筆検査によって, 過剰情報が, 問題状況を理解する過程での, 解決に必要な数値の選択に与える影響を中心に調べた。実験の結果, 通常問題では演算を選択する下位過程で正答数が減ったが, 過剰問題では問題文中の過剰な情報が数値を選択する下位過程を困難にし, 誤答の原因となっていた。これより, 文章題特有の難しさの原因の多くは問題理解過程にあり, 特に問題文から抽出した必要な数字の関係づけが, つまずきの要因になっていることがわかった。

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© 1993 一般社団法人 日本発達心理学会
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