発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
療育者の困難感とメンタルヘルスの関連性の検討
板川 知央佐々木 銀河
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: 36.0103

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抄録

本研究の目的は仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)を参考に,療育者の困難感とバーンアウトおよびワークエンゲージメントの関連性を検討することであった。全国児童発達支援協議会に加盟する児童発達支援事業所,放課後等デイサービス,児童発達支援センター計50団体に勤務する療育者計177名から回答が得られた。分析の結果,療育者の困難感から情緒的消耗感に正の影響が見られた。また,情緒的消耗感から脱人格化およびワークエンゲージメントにそれぞれ正の影響と負の影響が見られた。さらに,ワークエンゲージメントから脱人格化と個人的達成感にそれぞれ負の影響と正の影響が見られた。加えて,組織環境性から情緒的消耗感とワークエンゲージメントにそれぞれ負の影響と正の影響が見られた。本研究の結果から療育者の困難感(仕事の要求度)は情緒的消耗感を介して脱人格化を強める可能性が示唆された。また,療育者の困難感は情緒的消耗感を介してワークエンゲージメントを弱めることが考えられた。さらに,仕事の資源のうち,組織環境性はワークエンゲージメントを介して脱人格化を弱めることが考えられた。

【インパクト】

JD-Rモデルに基づく分析によって,1)療育者の困難感とメンタルヘルス(バーンアウトおよびワークエンゲージメント)の関係性が明らかになった。さらに,2)療育者個人の資源(コーピング)や仕事の資源(ソーシャルサポートおよび組織風土)が困難感とメンタルヘルスにどのような影響をもたらしているかが示され,彼らの心身の健康を高めるために必要な支援の一端が明らかになった。

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