2010 年 46 巻 2 号 p. 157-165
本研究の目的は,移乗補助具の使用,種類(トランスファーボードとスライディングシート)そして使用姿位の違いが移乗介助動作時の腰部負担に与える影響を椎間板圧縮力と剪断力を指標とした三次元的な動力学分析により明らかにすることである.対象は健常成人男性10名とし,内1名を被介助者とした.計測条件は移乗補助具を使用せず車椅子からベッドへ移乗を行う,トランスファーボードとスライディングシートを使用して立位で移乗を行う,トランスファーボードとスライディングシートを使用して片膝位で移乗を行う,以上5つの動作とした.結果として,移乗補助具を使用すると,補助具を使用しない移乗と比較して椎間板圧縮力と剪断力を大きく減少させることができた.片膝立ちで使用すると,立位で補助具を使用したときよりも更に腰部負担を軽減させることができた.これらの効果はトランスファーボードとスライディングシートいずれを使用しても同様に得ることができた.