2016 年 52 巻 1 号 p. 40-48
脚立上での作業中に,姿勢のバランスが崩れ転落する災害が多く発生している.本研究では,脚立への立ち方が最大リーチ時のリーチ距離および作業姿勢に与える影響を評価することで,姿勢が安定する立ち方を検討することを目的とした.実験は,男性10名を対象とし,脚立上で肩の高さまで上肢を挙上し,前方にできる限り手を伸ばした際の,水平リーチ距離,作業姿勢,床反力作用点(COP)の移動距離,姿勢の不安定さに関する主観評価について計測した.なお,水平リーチ距離は脚立の中心から手先までの水平距離から求めた.また,最大リーチ時のCOP位置から姿勢安定性を評価した.実験の結果,COPの移動距離は天板の2段下に立つと天板もしくは天板の1段下に立つより有意に大きくなることがわかった.また前方への最大リーチ距離は天板に立った場合と天板の2段下では有意差がなかった.このことから,天板の2段下に立つことでリーチ距離を短くすることなく姿勢の安定性が高くなることがわかった.