床暖房起動時における床温や室温の変化が生理的および心理的反応に及ぼす影響を検討するため,実験住宅にて実験を行った.実験は冬服(0.9clo)を着用した健康な若年女性8人を対象に,立ち上がり加温速度の異なる4条件で,床暖房起動時と安定時における皮膚温,深部体温,温冷感,快適感などをそれぞれ210分間測定した(30分の休憩を含む).その結果,起動時に急激に床温が上昇した場合,環境温の変化に対し平均皮膚温の変化が追いつかず,一方で深部体温が低下した.さらに床温が40℃という高温にもかかわらず温冷感は「暖かい」程度にとどまるため,暖かいほど快適と感じる傾向が認められた.また温冷感は,足底部皮膚温や平均皮膚温のみならず深部体温の低下に関係していた.床暖房起動時は自身の温冷感や快適感に基づき温度設定を行うと,必要以上に環境温を上昇させてしまう可能性が示唆された.