抄録
反復軽作業において, 高齢者にとって有効な生理的測定指標の抽出と, 作業成績, 疲労感などの作業特性について, 年代による差を検討した. 実験対象者は64~70歳の健康男性12名と, 男子学生12名 (22~25歳) であった. 作業の内容は, 異なった色のビーズに指定された順序で糸を通す作業であり, 作業速度を変化させることで, 4種類の作業項目を設定した. 老年群は疲労感が低いにもかかわらず, 交感神経系は高い亢進状態を示した. また, 作業内容に対する誤謬率では群間差を認めなかったが, 作業出来高は老年群で減少した. 自律神経系の反応は作業成績や疲労感との間に一定の対応関係が成立するものの, この関係は老化により減弱傾向を示した. 精神的作業に対して, 高齢者の自律神経系の活動状態を捉える測定指標として, 皮膚電位活動は有効な指標のひとつになりうるものと考えられる.