1990 年 26 巻 1 号 p. 41-47
人間の腕は機構的冗長性をもつため, 手の位置・方向だけでは一意に姿勢が定まらない. ところが, 人間は日常生活においてある程度決まった上肢姿勢をとっている. このことは人間が無意識下に姿勢を決定する基準を有していると解釈できる. 著者らは, 5名の被験者の9種類の上肢動作を計測・解析し, 手首位置と肩のある回転角との間に成立する関係式を見いだすことができた. この関係は, 任意の手首位置に対する腕姿勢は一意に決まることを意味しており, 人間の上肢姿勢がもつ法則性を定式化したものであるといえる. この関係式は動作の種類や被験者が変わった場合でも成立し, 人間らしい腕姿勢の生成を可能とする.