抄録
16種類のテレビ番組を聴取する際の音量を, 若年者と高齢者による聴取実験において測定した. その結果, 以下の4点が明らかとなった: (1) 若年者に比べて, 高齢者はテレビの音量を大きく設定する傾向がある. これは,「高齢者はテレビの音量を大きくしがちである」という日常的な観察を裏付けるものと言える. (2) テレビの聴取音量に, 男女差は認められない. (3) 番組によって, 聴取音量に違いが見られる. この違いは, 番組の内容ではなく, その音圧レベルに依存しており, 放送時のレベルが高い番組はより大きな音量で聴取される傾向にある. (4) テレビの聴取音量と被験者の聴力レベルとの間には, 有意な相関がある. 125Hzから8000Hzまでの7つの周波数における聴力レベルの平均が10dB増加することに, テレビの聴取音量は3.4dBずつ増すことが示された. 以上の測定結果は, 高齢者および若年者の居住空間における音環境を検討する上で, 基礎的資料となることが期待される.