人間工学
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3Dディスプレイを用いた視覚負荷よる眼精疲労
岩崎 常人
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2002 年 38 巻 1 号 p. 44-53

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抄録

パララックス・バリア方式3Dディスプレイ上で, 立体像を視覚負荷として与えたときの眼精疲労について検討した. 健常な男性被験者41例に対して, ランダム・ドット・ステレオグラムによる立体像を視覚負荷として15分間与えた. 負荷直後, アコモドポリレコーダーによって測定された調節近点距離と調節緊張・弛緩時間はいずれも有意に延長したが, 安静15分後および安静30分後には負荷前の値に回復した. 自覚症状では, 負荷直後, 有意に評定点の上昇した項目は,「眼が疲れる」と「眼が痛い」,「眼が重い」,「眼がかすむ」,「眼が乾く」,「眼がちかちかする・くしゃくしゃする」の6項目であった. 矯正方法別に, 裸眼, 眼鏡, ハードコンタクトレンズ (HCL) およびソフトコンタクトレンズ (SCL) に層別して解析を行ったところ (矯正はすべて-レンズ), 調節近点距離は, 裸眼とSCL群で有意に延長し, 調節緊張時間と弛緩時間は, 裸眼とHCLおよびSCLの各群においていずれも有意に延長した. 眼鏡群では, 近点距離と調節緊張時間, 弛緩時間のいずれにおいても有意な変化はみられなかった. 自覚症状に関しては, 負荷直後, 訴えの上昇した項目は, 裸眼とHCLおよびSCL群では,「眼が疲れる」と,「眼が重い」,「眼がかすむ」,「眼が乾く」,「眼がちかちかする・くしゃくしゃする」であったが, 眼鏡群では,「眼がかすむ」と「眼が乾く」については有意な変化はなかった. これらのことから, パララックス・バリア方式3Dディスプレイによる立体像の負荷は, わずか15分という短時間で眼精疲労を誘起し, 裸眼またはコンタクトレンズ装用時での視覚負荷の影響に比べて, 眼鏡装用時での負荷の影響は少なかったと結論される.

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© 一般社団法人 日本人間工学会
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