おかしさを感じて自然に起きた笑いと, 作り笑いとの表出の差異を解明するため, 2つの実験を行った. 計測実験では, 眼輪筋及び大頬骨筋の筋電図, 呼吸曲線を記録し, 笑い表出に伴う反応の開始時間を分析した. 被験者は男性15名女性17名で, YG性格検査の得点で社交群と非社交群に分類した. コメディビデオを見せた時の‘自然な笑い’, 面白くないコメディビデオを見せた時の‘作り笑い’, 教示のみによる‘極端な作り笑い’の3種類を比較した. その結果, 3種類の笑い間で, 眼と呼吸の反応開始の時間差に有意差がみられた. また, 女性非社交群と男性社交群で, 眼と口の反応開始の時間差に有意差がみられた. 観察実験では, 計測実験の被験者のビデオ記録を刺激として, 男性12名女性13名が笑いの自然さを観察評価した. その結果, 呈示した笑い表出の種別と, 観察による評価の一致率は低いことがわかった. また, 表出者及び観察者の性別それぞれについて, 笑いの自然さの評価に有意差がみられた.