2019 年 9 巻 1 号 p. 15-23
本研究は,大学に所属する学生のネガティブな出来事による感情の制御方略使用傾向が,その人のゆるし 傾向性に与える影響を明らかにすることを目的とした。学生223名(男性110名,女性113名)を対象に,日本 語版Cognitive Emotion Regulation Questionnaire(榊原, 2015)とゆるし傾向性尺度(石川・濱口, 2007)を実施 した。結果,ゆるし傾向性に対して,適応的な方略のうち肯定的再評価と気晴らしから正の影響が,不適応 的な方略すべてから負の影響が確認された。ネガティブな出来事に遭遇した時の感情制御方略として肯定的 再評価や気晴らしを推進することで,相手をゆるそうという考えや自分を責め続けずその出来事が自分のた めになるという考えにつながることが明らかとなった。これにより人間関係の補正や攻撃行動の減少,ウェ ルビーイングや精神的健康の向上が見込まれるため,文部科学省(2000)の指摘する大学生の諸問題に対して も肯定的再評価と気晴らしによる一定の効果が期待できると考えられる。