抄録
今回我々は,心筋炎の疑いにて入院し,入院2日後突然,低心拍出量症候群(LOS)を来し,積極的治療として経皮的心肺補助(PCPS)を施行して救命し得た症例を経験した。症例は,60歳女性,身長147cm,体重47kg,体表面積1.38m2。現病歴は,入院2日前より左前胸部痛を繰り返し本院を受診した。受診時,心電図はSTが上昇し心カテーテル検査ではCAG,LVGに問題なく,バイオプシを施行した。入院後経過はEF70%であったため経過観察となる。入院2日後突然LOSになり,人工呼吸器とIABPを施行するもCO1.5l/minと改善されないためPCPSを施行した。自己心拍出量はPCPS開始直後1.1l/minであり,開始5日目までは1.1~1.2l/minと効果なく推移した。開始6日目より緩やかに,8日目より急激に改善され,9日目には4l/min(CI3.0l/min/m2)以上にまで改善し,11日目の離脱となった。一般的に心筋炎の患者には,PCPSが有用と言われているが,今回我々の経験でも良好な結果をもたらした。今後は積極的にこれらの治療方法を施行していきたいと考えている。