教育心理学研究
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原著
ルール適用を妨げる要因としての事例範囲の誤った解釈
伏見 陽児麻柄 啓一
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2009 年 57 巻 3 号 p. 284-294

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抄録

 ルールを教示しても事例に対してそれが適用されない場合がある。麻柄(2006)は, 教示されたルールに例外があるかもしれないという「例外への懸念」がその原因となっていることを示した。本研究ではまず麻柄で扱われた「例外への懸念」が, 個別事例に基づくものである点を指摘し, それ以外に, 個別事例に基づかない一般的なルールの誤解釈がルールの適用を阻んでいる可能性を検討した。「(すべての)金属は非金属より熱伝導率が高い」「(すべての)金属は電気を通す」という理科のルール, 「(すべての)XはQである」という論理ルールに即して, 大学生等の大人(414名)が事例の分布範囲をどう考えているかを調べた。その結果, 論理ルールにおいても事例範囲を「すべて」ではなく自動的に割り引く傾向が認められた。その傾向は理科のルールの方が論理ルールより顕著であった。またそのように割り引く者はルールを事例に適用する傾向が弱いことが確認された。

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© 2009 日本教育心理学会
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