教育心理学研究
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原著
中学生の過剰適応と学校適応の包括的なプロセスに関する研究
—個人内要因としての気質と環境要因としての養育態度の影響の観点から—
石津 憲一郎安保 英勇
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2009 年 57 巻 4 号 p. 442-453

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抄録

 過剰適応はいわゆる「よい子」に特徴的な自己抑制的な性格特性からなる「内的側面」と, 他者志向的で適応方略とみなせる「外的側面」から構成されている。これまでこの2つの高次因子は並列的に捉えられてきたが, 内的側面は具体的な行動を生起させる要因として想定することができる。そこで本研究では, 幼少時の気質と養育者の態度を含め, 因子間の関連性を再検討することを第1の目的とし, 過剰適応の観点を含めた包括的な学校適応のモデルの構築を第2の目的とした。1,025組の中学生とその母親を対象にした調査の結果, 養育態度や気質から影響を受けた「内的側面」によって「外的側面」が生起するモデルの適合度が相対的に高いことが示された。また, 過剰適応の内的側面である「自己不全感」や「自己抑制」が「友人適応」や「勉強適応」に負の影響を与える一方で, 「自己不全感」や「自己抑制」が過剰適応の外的側面に繋がった場合には, 外的側面はそれらの適応を支えるべく作用していたが, 抑うつ傾向には影響を与えていなかった。個人が過剰適応することで社会文化的には適応していく可能性があるが, 心理身体レベルでの適応とは乖離がなされていくことが想定される。

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© 2009 日本教育心理学会
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