教育心理学研究
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原著[実践研究]
知識構築型アーギュメントの獲得
—小学生を対象とした科学技術問題に関するカリキュラムの開発と改善を通して—
坂本 美紀山口 悦司稲垣 成哲大島 純大島 律子村山 功中山 迅竹中 真希子山本 智一藤本 雅司橘 早苗
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2010 年 58 巻 1 号 p. 95-107

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抄録

 多様なステイクホルダーによる社会的合意の形成が求められる公共的な課題では, エビデンスを用いて自分の意見を補強するというよりは, 多くの立場の合意を目指し, 賛成や反対の条件, 代替策といった, 新しいアイディアを提起するようなアーギュメントが必要になる。本研究はこれを, 知識構築型アーギュメントと呼び, 小学生を対象とした科学技術問題に関するカリキュラムの中で, その育成を目指した。さらに, 開発したカリキュラムを, 知識構築に関するデザイン原則の一つである認識主体性の観点から改善し, 児童の知識構築型アーギュメントにもたらす影響を検討した。学習の進行に伴うアーギュメントの変化をカリキュラム間で比較した結果, 改善版のカリキュラムにおいては, ベースラインのカリキュラムの場合より, 賛否両論を考慮した提案型の意見が増加し, 児童の知識構築型アーギュメントをさらに向上させられたことが明らかになった。さらに, 授業デザインの変更に伴う授業展開や学習活動の差異を検討し, 知識構築型アーギュメントの向上に寄与した支援について明らかにした。

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© 2010 日本教育心理学会
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