教育心理学研究
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原著[実践研究]
保育者はいかにして相談員の意見を受けとめるのか
—巡回相談における保育者の概念変容プロセス—
三山 岳
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2011 年 59 巻 2 号 p. 231-243

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抄録

 本研究は, 心理の専門家による巡回相談において, 子どもと保育に対する保育者の捉え方(概念)にどのような変容が生じるのか, さらにどのような要因がその概念変容に影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的としている。保育所と幼稚園の保育者20名にインタビュー調査を行い, その逐語記録をM-GTAによって分析し, 巡回相談における保育者の概念変容プロセスのモデル図を作成した。保育者は相談員による意見の提供をきっかけに, 複数の影響因の干渉を受けながら, 普段の保育での様子を検証的に振り返る体験をしていた。この振り返り体験が相談員の意見に対する最終的な保育者の受けとめを左右し, その結果に応じて子どもや保育の捉え方が具体的に変容していくことが分かった。概念変容の過程が明らかになったことで, 巡回相談のコンサルテーションでは, 相談時に普段の保育を保育者が豊かに振り返ることができたかどうか, 相談員の意見と保育者の実感の一致が見られたかどうかが相談員にとって重要な指標であることが示された。

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© 2011 日本教育心理学会
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