教育心理学研究
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原著
階層的なデータ収集デザインにおける2群の平均値差の検定・推定のためのサンプルサイズ決定法と数表の作成
—検定力および効果量の信頼区間の観点から—
宇佐美 慧
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2011 年 59 巻 4 号 p. 385-401

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抄録

 社会科学の分野においては, サンプリングされた個人(e.g., 生徒, 患者, 市民)の測定データが, 上位の抽出単位である集団(e.g., 学校, 病院, 地域)にネストされた構造を持つことが多い。このような階層データにおいては, 一般に階層線形モデル(Hierarchical Linear Model : HLM)のような, 同一集団内に所属する個人間の相関情報を考慮した解析手法が有用である。本研究では, 階層データにおいて, 2群間の平均値差に関心がある場合に着目し, 検定力および効果量の信頼区間幅の観点から必要なサンプルサイズを決定するための決定方法を, 群の割り当てが個人単位で決定される場合(Multisite Randomized Trials : MRT)と集団単位で決定される場合(Cluster Randomized Trials : CRT)のそれぞれについて, ランダム切片モデルを用いて解析した状況を想定して統一的に導出する。さらに, 実用上の観点から, 一定の検定力および信頼区間幅を得るために必要なサンプルサイズをまとめた数表の作成も試みた。 MRT型の収集デザインのための数表は, 個人内の反復測定デザインや, ランダムブロックデザインなどの, いわゆる対応のあるデザインから得られるデータにおいても利用可能である。

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© 2011 日本教育心理学会
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