教育心理学研究
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原著
担任教師にスクールカウンセラーとの協働の開始を促す状況
—グラウンデッド・セオリー・アプローチによる仮説モデルの生成—
山本 渉
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2012 年 60 巻 1 号 p. 28-47

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抄録

 本研究では, 担任教師にスクールカウンセラー(以下, SCと略記)との協働の開始を促す状況とはどのようなものかについて, 担任教師の視点から, ボトムアップ的な現状把握を行うことを目的に, 半構造化面接法にて収集された16名の中学校教師のインタビュー・データを, グラウンデッド・セオリー・アプローチを援用して分析した。その結果, 5つの仮説的知見とモデルを生成した。仮説的知見とモデルの考察から, 担任教師が, 生徒の気になった言動について考える際に, その背景や理由を, 生徒個人の中に困難がある, 保護者の問題が影響している, 理由がはっきりしない, という3種に分けて理解している可能性や, 生徒(または保護者)への対応にあたって, 担任という立場に身を置くと誰もが課される制約を感じることが, 担任教師にSCとの協働の開始を促す可能性が示唆された。また, 担任教師がSCに期待する活動についても併せて検討したところ, 担任教師がSCに寄せる期待は, (1) 生徒・保護者に一緒に対応する人になること, (2) 自分が対応するにあたっての相談者になること, (3) 自分の対応に役立つ情報の提供者になることという, 3種に整理できることが示された。

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© 2012 日本教育心理学会
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