教育心理学研究
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原著
漢字圏日本語学習者における日本語単語の意味処理に及ぼす母語の影響
—聴覚呈示の翻訳判断課題による検討—
邱 學瑾
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2012 年 60 巻 1 号 p. 82-91

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抄録

 本研究は, 中国語と日本語の二言語間の同根語という観点から, 翻訳判断課題を用い, 漢字圏日本語学習者の日本語単語の意味処理に及ぼす母語の影響を検討したものである。実験1では, 聴覚呈示された日本語の後, 中国語が視覚的に呈示された。実験参加者は, 呈示された日本語と中国語が翻訳同義語であるかどうかを判断するように教示された。その結果, 日本語習熟度及び日本語単語の出現頻度にかかわらず, 同根語は非同根語より反応時間が短いことが示された。一方, 後続の中国語が聴覚的に呈示された実験2では, 低頻度語において, 同根語は非同根語より反応時間が長いことが明らかになった。また, 同根語のみにおいて, 高頻度語は低頻度語より反応時間が短かった。以上の結果から, 実験1で示された同根語の意味処理における優位性は中国語の文字情報によるものであったと考えられる。また, 同根語は非同根語より日本語の音韻習得の定着が遅いことも示唆された。

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© 2012 日本教育心理学会
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