教育心理学研究
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原著[実践研究]
数学授業における協同過程が高校生の指数関数的変化についての理解に及ぼす効果とそのプロセス
小田切 歩
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2012 年 60 巻 4 号 p. 416-429

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抄録

 本研究は, 理解を深めることを知識の再構造化を行うことと定義し, 協同過程において非発言者を含む個人が理解を深めるプロセスを明らかにすることで, 高校の数学授業における, 個人の理解に結びつくような協同過程のあり方について検討した。高校生が困難を抱えている指数関数的変化に関する問題解決過程を, 事前テスト—授業(協同過程を通じた問題解決または演習と解説)—事後テストのデザインで検討した。分析の結果, 協同過程において, 自分の考えを明確にし, 生じた認知的葛藤を解消するため, 既有知識や他者の考えを関連づけて自分の考えを精緻化し, 新たな考えを創出することが, 授業後の知識の再構造化につながることが示された。さらに個人の考えの精緻化プロセスの分析から, 認知的葛藤の発生と解消を通じて知識の再構造化が適切に行われるためには, 協同過程を組織する上で, (1)生徒が自分の考えを明確にできるよう, 既有知識を活かせる課題を設定し, 個別解決の時間を十分にとること, (2)生徒による他者の考えの根拠の明確化や不十分点の指摘を, 発問によって促すこと, (3)多様な考えが可能な課題を設定し, 考えの発表を促すこと, の3点が重要であることが示唆された。

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© 2012 日本教育心理学会
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