2013 年 61 巻 4 号 p. 412-424
本研究ではアサーティブネス・トレーニング(Assertiveness Training : AT)の効果研究における2つの混乱, (1)ATがアサーティブネス習得そのものに与える効果とアサーティブネスがもたらす波及的効果との混乱と, (2)アサーティブネスと攻撃的コミュニケーションとの混乱を取り上げた。AT実践の場で伝えられている諸概念の位置づけやスキル内容に依拠しつつ,これらを検討し, AT研究が取り組むべき課題を探ることを目的とした。第1に, アサーティブネスの定義が曖昧であるという指摘がある中, アサーティブネスとは「自己尊重」と「他者尊重」の両者を軸とするコミュニケーションとして明確に定義すべきであることを改めて提唱した。第2に, 「他者尊重」を欠く自己主張は攻撃的コミュニケーションであり, アサーティブなコミュニケーションとは排他的類型として明確に区別されるものであることを明らかにした。今後, 「自他尊重」を土台として, 攻撃型を含まない形でのアサーティブネスの測定が必要であり, その上でアサーティブネスが「関係構築」「課題遂行の促進」「社会変革」へ与える効果が検討されることが今後の課題であると提唱した。