教育心理学研究
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展望
犯罪者・非行少年の処遇におけるメタ認知の重要性
—自己統制力と自己認識力, 社会適応力を効果的に涵養するための認知心理学的アプローチ—
大江 由香亀田 公子
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2015 年 63 巻 4 号 p. 467-478

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抄録

 本稿では, 再犯防止を図るための効果的な指導法を探索することを目的として, 近年重要性が認識されつつあるメタ認知と自己統制力, 自己認識力, 社会適応力との関連について文献研究を行った。メタ認知能力が低い者ほど, 必要な情報を察知できず, 視野の狭い短絡的・感情的・主観的な判断・行動をしやすいと言う。そして, メタ認知能力に乏しいと, 衝動性が高くなり, 自己に関連する情報や他者の非言語的なメッセージを読み誤りやすくなる傾向があることが分かり, 文献研究の結果, メタ認知の能力の乏しさが犯罪・非行への準備性を高める得ることが推察された。メタ認知能力は, 知的障害や発達障害などがあってもトレーニングによって鍛えることができ, マインドフルネスを含む第三世代の認知行動療法などによっても涵養し得ることから, 今後犯罪者・非行少年の処遇にメタ認知の向上を目的とした指導法を積極的に取り入れていくことが重要と考えられた。

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© 2015 日本教育心理学会
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