教育心理学研究
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原著
高校の数学授業での協同学習における個人の説明構築による理解深化メカニズム
—数列と関数の関連づけに着目して—
小田切 歩
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2016 年 64 巻 4 号 p. 456-476

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抄録

 本研究では, クラス単位の協同学習において, 非発言者を含む個人の説明構築がどのように促され, さらにその説明構築によって, なぜ個人の理解が深まるのかという, 協同学習を通じた個人の理解深化の認知的メカニズムを検討した。高校生が理解に困難を抱えている数列と関数の関連づけに関する問題解決過程を, 事前課題-授業(協同学習の有無)-事後課題のデザインで検討した。分析の結果, クラス単位の協同学習において, ペアでの知見から導かれた他者の役割によって, 個人が自分の考えを精緻化する中で, その不整合への気付きと整合化が促されることにより, 個人の説明構築が促進され, それが個人の理解の深まりにつながることが示された。さらに, 他者の考えの整合化過程において, 自分の着眼点に沿って情報を抽出し, それを自分の考えと関連づけることで, 新たな考えを創出するという, より深い理解につながるプロセスが示唆された。また, 生徒間の相互説明が, それを聞く生徒の考えの整合化を促す可能性も示唆された。そして, 時間に限りのある授業場面でのクラス単位の協同学習においては, 学習の効率化を図るために, 教師の支援が必要であることも示唆された。

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© 2016 日本教育心理学会
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