教育心理学研究
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原著
小学校高学年児童および中学生における情動調整方略と抑うつ・攻撃性との関連
村山 恭朗伊藤 大幸高柳 伸哉上宮 愛中島 俊思片桐 正敏浜田 恵明翫 光宣辻井 正次
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2017 年 65 巻 1 号 p. 64-76

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抄録

 情動調整方略はメンタルヘルスに影響を及ぼす要因の1つである。国内では, 反すう, 問題解決, 気晴らし, 認知的再評価を同時に測定できる尺度がないため, 国内の小中学生における情動調整とメンタルヘルスの関連についての知見はあまり報告されていない。そこで, 本研究は単一市内の全小中学校に在籍する小学4年生から中学3年生までの5,321名を対象として, 既存の尺度に新たに認知的再評価の項目を加えた情動調整方略に関する尺度(Emotion Regulation Scale for Elementary and Middle School Students; ERS-EM)を作成した上で, 情動調整方略と抑うつおよび攻撃性の関連を検証した。因子分析の結果, ERS-EMは4因子構造であることが確認され, ERS-EMの構成概念妥当性が支持された。各方略と抑うつおよび攻撃性の関連については, 反すうが強い児童生徒ほど抑うつと攻撃性が高いこと, 問題解決の傾向が高い児童生徒ほど抑うつと攻撃性が低いこと, 気晴らしを行う児童生徒ほど抑うつが低いことが確認された。認知的再評価は抑うつと攻撃性のいずれとも有意な関連を示さなかった。

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© 2017 日本教育心理学会
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