2017 年 65 巻 3 号 p. 361-374
本研究では, 青年期と成人期において, 共感性の2側面(共感的関心・個人的苦痛)と情動コンピテンスの2領域4側面(自己領域・情動の読み取り, 自己領域・情動の運用, 他者領域・情動の読み取り, 他者領域・情動の運用)がどのように個人の道徳性(社会的場面における道徳推論)と関連しているかについて検討した。参加者(352名)は, 青年期用多次元的共感性尺度, 情動コンピテンスプロフィール短縮版, 道徳推論課題を含む質問紙調査またはオンライン調査に回答した。結果から, 共感的関心は, 様々な社会的状況における他者志向的な道徳的判断につながることが示された。また, 情動コンピテンス他者領域の中でも情動を読み取る側面と情動を運用する側面はそれぞれ異なる形で道徳推論に影響していることが示され, 他者の情動を認識・理解し扱う能力は, ときに自己志向的な動機づけに結びつき得ることが示唆された。