2019 年 67 巻 3 号 p. 190-202
青年期において時間的展望は重要な役割を持っており,特に未来展望はアイデンティティの形成やwell-beingと密接な関連があるとされる。一方で,時間的展望を形成する要因について十分に明らかになっているとはいえない。本研究は,時間的展望(特に未来展望)の形成に影響する要因としてノスタルジアを取り上げ,実験的にノスタルジアを喚起した群(ノスタルジア群)とそうでない群(統制群)の間で,喚起後の時間的展望の程度に差がみられるかどうか検討することを目的とした。またその際,未来展望の群間差を本来性によって説明できるかどうかについても検討を行った。大学生44名が実験に参加し,それぞれノスタルジア群か統制群にランダムに割りあてられた。実験の結果,まずノスタルジア群は統制群よりも未来についてポジティブな態度をとっており,ネガティブな態度をとっていないことが示された。これらの結果は,現在および過去への態度についても同様であった。また,群間における未来へのポジティブ(ネガティブ)な態度の差は,本来性によって有意に媒介されることが示された。最後に,研究のデザインおよび時間的展望の下位概念という観点から本研究の課題と展望について議論された。