2019 年 67 巻 4 号 p. 317-329
大学入学時,学生は新しい環境への適応,新たな自己像の確立という2つの課題と直面する。これらの課題に学生が向き合えるよう予防的に支援することが重要である。本研究の目的は,大学新入生に対してアサーション・トレーニングを実施した場合,実施しなかった場合に比べ,自己主張,他者尊重,視点取得,怒り表現,適応感,アイデンティティ,自己受容に正の影響がみられるか,および,アサーションに対する効果とそれ以外に対する効果との間に関連がみられるかを検討することであった。大学新入生を介入群28名,対照群33名に振り分け,質問紙調査をトレーニング実施直前,実施直後,2ヶ月後,6ヶ月後に実施した。分析対象者は介入群,対照群ともに最後まで調査協力が得られた26名であった。分散分析の結果,自己主張,怒り表現,適応感,アイデンティティ,自己受容に中から大の効果がみられた。最後に,結果をアサーション・トレーニングの理念,大学生の対人関係の特徴といった観点から考察した。