教育心理学研究
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原著
複数英語文章の読解能力を測るテスト項目の困難度に影響を及ぼす要因の検討
―項目作成の初期段階における構成概念の定義と表現に着目して―
寺尾 尚大
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2021 年 69 巻 1 号 p. 37-51

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抄録

 本研究の目的は,複数英語文章の読解能力を題材として,テスト項目の困難度パラメタに影響を及ぼす要因を検討することであった。大学生151名に対し,同一のテーマについて述べられた二つの文章を一組の文章セットとして提示し,複数英語文章の読解項目への解答を求めた。本研究では,文章セットに含まれる文章の内容の一部を記述した各文が,どの文章で記述されていたかを問うテスト項目を作成し,制約つき2パラメタ・ロジスティックモデル(2PLCM)を適用して,項目困難度パラメタに影響を及ぼす要因について検討を行った。その結果,二つの文章を読んではじめてわかることがらを記述した文や,いずれの文章にも記述されていないことがらを記述した文の分類に関する項目で困難度が高くなっていた。一方,二つの文章が互いに補い合う関係にある相補的文章セットと,二つの文章の間で主張が対立する関係にある矛盾・対立的文章セットの間では,項目困難度は異ならなかった。本研究から得られた知見は,複数英語文章の読解能力を測るテスト項目の作成に対する指針を提供しうるものであることが示唆された。

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© 2021 日本教育心理学会
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