教育心理学研究
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集団決定と講義の行動変化に及ぼす効果の比較
牧田 稔高月 東一斎藤 定良岡本 淑人中村 陽一池内 一岡部 慶三水原 泰介
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1969 年 1 巻 2 号 p. 20-27,64

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抄録

食前, 用便後等に石鹸を用いての手洗いを励行させようとする場合に, 被験者達に対して講義を行つてその必要と効果を力説する方法と, 被験者達にこれについて討議による集団決定を行わせる方法と何れがより有効な教育法であるかを実験的に検討した。
女子大学の寮生に対して (1) 石鹸を用いての手洗いをどの程度に実行しているかを事前に調査し,(2) 3つの寮の代表者各10名づつに対して各寮別に講義を行い, 4つの寮の代表者10名づつに各寮別に討議による集団決定を行わせ,(3) 10日後に再び, 石鹸を用いての手洗いをどの程度に実行しているかを調査した。
講義, 討議を行う前の調査の結果と, その10日後の調査の結果とを比較してみると, 討議群の方が講義群よりも石鹸を用いての手洗いの実行度の増加がより大であつた。討議や講義には直接参加しないで, 自分の寮の代表者達から石鹸を用いての手洗いについて勧告, 伝達を受けた寮生についても, 討議群の方が講義群よりも, その実行度がより多く増加する傾向が見られた。この結果は, 討議に参加した代表者の方が講義群代表者よりも, 残りの寮生に対する勧告, 伝達がより熱心であつたことを示すものと考えられる。

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