教育心理学研究
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児童と教師の人間関係の研究V
教師に対する児童の態度の1年間の変動および学校好嫌態度との関係
岸田 元美
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1962 年 10 巻 1 号 p. 1-10,62

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抄録

教育の基底として考えられる児童・生徒と教師の人間関係について教師に対する児童の親近愛着および疎遠離反の対人態度を, 同一児童を継続して1力年間調査した。
調査時点は, 新学年当初, 1ヵ月後, 1学期終了前, 2学期終了前および学年末の5時点である。各調査時点では教師に対する態度の測定尺度および学校好嫌態度の測定尺度の2種類の態度尺度を使用して, 毎回同一調査を行なつた。測定尺度は, Thurstone, L.L.のmethodof equal-appearing intervalsに準拠して作成されている。調査対象は同一小学校4年生の学級の児童である。
調査結果の測定値を学級別でまとめて検討すると4学級相互の態度の測定平均値は, 担任教師の諸特性に応じて相違が認められ, その差は統計的に有意な差があつた。しかしそれぞれの学級内では, 通常の特性を備えた教師が担任する学級では, 教師に対する児童の態度に年間の変動が少ない。すなわち各調査時点間の測定値相互の相関が大であり, その相関は有意である。また同一児童の態度の変動も少なくて, 1年間を通じてほぼ恒常的であつた。しかしやや特異な特性をもつ教師が担任する学級では, 年間の変動が大であり, とくに第1と第2, 第2と第3の調査時点間の測定値の差が大であり, その差はすべて統計的に有意な差であつた。
したがつて以上の結果からみて, 児童は通常は教師に対して初めて接触した当初の間の印象や, それまでに既得の教師イメージを手がかりとして, 教師に対する態度を構成し, これでもつて1力年間を継続する傾向があるといえる。教師に対する児童の態度と学校好嫌態度との相関はかなり大であつて, 担任教師に親近愛着する児童は, その程度に相応じて学校を好む態度も大になつている。

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