教育心理学研究
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父母の教育に対する態度のQ-技法による研究
波多野 誼余夫
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1962 年 10 巻 1 号 p. 20-29,64

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抄録

教育行政的観点からも, 人格形成という点からも, 教育的環境の重要な一部だと思われる, 父母の教育に対する態度を分析する手がかりをうるため, 一般の父母9名PTA役員7名, 教師2名, 教育研究者4名について, Q技法による調査を行なつた。60個の教育に関する陳述は, 態度 (進歩主義的-伝統主義的), 領域 (学力・教科課程-社会性・人間関係-体力・健康) の2次元について構造化されており, 被調査者は, 賛成-反対の次元で9段階にこれらの陳述を分類することを要求される。
各人のQ分類の分散分析, およびQ分類間の相関マトリックスの因子分析の結果から, 次のような諸点があきらかにされた。
(1) 一般父母の教育に対する考えかたは, 進歩的-伝統的という観点からは, はつきりした傾向を示さない。
(2) これに対して, 教育研究者, 教師は, はつきりと進歩的な態度を示す。
(3) しかし, これは一般父母の態度が, なんらの共通項をもたない, ということではない。それどころか, 一般父母は, 因子分析の示すところによれば, 共通して第2因子-常識的教育観をあらわす, と思われる-にかなり高い負荷量を示している。
(4) 教育研究者は, 進歩的教育観をあらわすと思われる第1因子に, いずれも高く負荷している。PTAの役員はこれに準ずる傾向がある。また, 教師の態度は, 第1因子にも, 第2因子にもかなりの負荷量をもつている。
この調査は, アメリカにおけるKerlingerの同様な研究と, かなりよく似た結果を得ている。しかし, このような研究が一層発展していくためには, なお多くの点で解決されねばならない問題点があると思われる。

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© 日本教育心理学会
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