教育心理学研究
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学習機構の解析に関する方法論的研究: III
学習準備性 (点) の解析 (その3)
中嶽 治鷹
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1962 年 10 巻 2 号 p. 99-106,126

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抄録

ここでは, 基礎的な能力の体系 (S1, S2, …, Sn) をもつ被教育者が, ある教育作用のもとで新しい学習目標 (α1, α2, …, αm) に対して, どこまで到達できるか, 到達できる領域はどこか, という点を問題にし, 到達できる領域 (α1, α2, …, αk) を学習準備域 (Rs(α)) とよぶことにした。
この学習準備域 (RS(α)) は, たとえば, 基礎的な能力の状態を (S1=1, S2=1, …, Sj=1, Sj+1=0, …, Sn=0) とした場合, これを学習準備点 (R(αj)) としてもつ学習目標 (αj) に対して,(R(αj)) で覆われるすべての学習準備点 (R(αi)) によつて規定される学習目標 (αi) を含んでいると考えられる。
また, 基礎的な能力として,(S1, S2, …, Sn) をもつている被教育者のなかで, 新しい学習目標を,(α1, α2, …, αm) という状態で理解している人の比率を, φ (S1, S2, …, Sn)(α1, α2, …, αm) で表わすと, 学習準備域RS(α)=(α1=1, α2=1, αk=1, αk+1, …, αm=0) に対して, 論理的にはφ (S1, S2, …, Sn)(α1=1, α2=2, …, αk=1, αk+1=0, …, αm=0)=1となり, 他のどのような (α1, α2, …, αm) の組合わせについてもφ (S1, S2, …, Sn)(α1, α2, …, αm)=0となる。したがつて, このような観点から,(RS(α)) は (7) 式によつて抽出することもできる。さらに, 学習準備域とそうでない領域との間にある境界要素については,(9),(10),(11) 式のような特性を見出すことができる。
以上のようにして, 学習準備域の構造の概要は, ほぼ明らかになるが, ここにあげた方法では, 基礎的な能力 (S1, S2, …, Sn) や, 学習目標 (α1, α2, …, αm) の選定が基本的な問題になる。ここでは, 選定の規準の標識として,(14'),(15') 式をあげ, これを満たすものは, ほぼ妥当な内容を示すと考えた。

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