1962 年 10 巻 2 号 p. 99-106,126
ここでは, 基礎的な能力の体系 (S1, S2, …, Sn) をもつ被教育者が, ある教育作用のもとで新しい学習目標 (α1, α2, …, αm) に対して, どこまで到達できるか, 到達できる領域はどこか, という点を問題にし, 到達できる領域 (α1, α2, …, αk) を学習準備域 (Rs(α)) とよぶことにした。
この学習準備域 (RS(α)) は, たとえば, 基礎的な能力の状態を (S1=1, S2=1, …, Sj=1, Sj+1=0, …, Sn=0) とした場合, これを学習準備点 (R(αj)) としてもつ学習目標 (αj) に対して,(R(αj)) で覆われるすべての学習準備点 (R(αi)) によつて規定される学習目標 (αi) を含んでいると考えられる。
また, 基礎的な能力として,(S1, S2, …, Sn) をもつている被教育者のなかで, 新しい学習目標を,(α1, α2, …, αm) という状態で理解している人の比率を, φ (S1, S2, …, Sn)(α1, α2, …, αm) で表わすと, 学習準備域RS(α)=(α1=1, α2=1, αk=1, αk+1, …, αm=0) に対して, 論理的にはφ (S1, S2, …, Sn)(α1=1, α2=2, …, αk=1, αk+1=0, …, αm=0)=1となり, 他のどのような (α1, α2, …, αm) の組合わせについてもφ (S1, S2, …, Sn)(α1, α2, …, αm)=0となる。したがつて, このような観点から,(RS(α)) は (7) 式によつて抽出することもできる。さらに, 学習準備域とそうでない領域との間にある境界要素については,(9),(10),(11) 式のような特性を見出すことができる。
以上のようにして, 学習準備域の構造の概要は, ほぼ明らかになるが, ここにあげた方法では, 基礎的な能力 (S1, S2, …, Sn) や, 学習目標 (α1, α2, …, αm) の選定が基本的な問題になる。ここでは, 選定の規準の標識として,(14'),(15') 式をあげ, これを満たすものは, ほぼ妥当な内容を示すと考えた。