教育心理学研究
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親子関係の規範意識と実践意識について
その社会的要求性との関連
大石 明子
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1962 年 10 巻 4 号 p. 215-224,252

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抄録

現代社会において親子関係の規範がどのように人びとに受け入れられているか, どのような親子関係を“よい”と評価しているか,親子関係の現状をどう評価しているかについて調査する目的で,今回は都市に住む人を対象に,一連の調査研究を行なつた。
結果としては,
(1)規範意識は,年令・性を変えても,また親であるか子どもであるかにかかわらず,ほとんど変化しなかつた。
(2)実践意識は,年令・性を変えると,ある種の親子関係においては変化した。よい親子関係を示すといわれている刺激文章群では年令差,性差,親と子の差がみられた。
(3)規範意識と実践意識との関連は,年令・性・親子により異なり,若い人,男性群の方が年輩の人,女性群よりも規範意識と実践意識とのずれが大きい。文章の型別にみると,年輩の人,女性群では,両意識はほとんど一致しているとさえいえる。(4)子どもの規範意識と実践意識のずれが大きいと(あるいは小さいと),その親の両意識のずれも大きい(小さい)。
年令別・性別により,親子関係の規範意識は異なるだろうとの常識的予想をよそに,どの年令層も,男も女も規範的な親子関係の評価はきわめて類似していた。あらかじめ規範意識と実践意識のずれの大きい人たちを選んだ群を除き,どの評価者群においても,両意識間の列位相関は非常に高く,SDはよかれあしかれ実践意識に大きな影響を及ぼしていることが示された。若い世代よりも年輩の人たちの方がSDの影響を受けやすいことが示された。
こうして,親子道徳規範がどのような形で存在し,人びとにどう意識されるか,また,それらは実践意識にどのように影響するか明らかにするためには,このSDという変数を統制することの必要性が示唆された。

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