教育心理学研究
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日本人学生の学習した英語名詞の意味構造の比較研究
芳賀 純
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1963 年 11 巻 1 号 p. 33-42,63

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抄録

本研究では, 従来英語教育の中で論じられている日本人学生の学習した英語単語の意味を, 中学生を被験者として, 25の対形容詞を含むSemantic Differentia1を用いて測定し, その結果をJenkins等によつて得られている米国人学生の結果と比較することを試みた。比較は10個の英語単語についての日・米両被験者群のグループ平均評定値をもとにして, 各対応する尺度値間の差の検定, 対応するSemantic profiles間の相関係数による検討, および日・米両群についてThurstoneの完全セソトロイド法による因子分析の結果から得た英語名詞間の意味構造を検討することによつて行なつた。尺度値間の差は, 10個の単語中の7個の, ある種の形容詞のうえに顕著に生じたが, プロフィール全体として相関係数を求めると, 日本人学生の英語単語のプロフィールと米国人学生のそれとの相関値は, 日本人学生の英語単語の意味とその英語単語に対応する日本語単語の意味との相関値よりもすべて低くなることから, 日本人の学習した英語単語の意味は米国人学生のそれによりはむしろ日本語のそれに近いという結果が得られた。このことは, 日本人中学生の英語単語の意味は一般に母国語である日本語の影響を受けているということを示唆している。
つぎに因子分析の結果からは, 第3因子までが, 両群につき抽出され, そのうち第I因子は価値的因子, 第II因子は力量・活動的因子であることがわかつた。日・米両群における10個の英語名詞の第I, II因子から得られる意味構造を比較すると, それぞれの名詞の意味がかなり異なることがわかつた。特に異なる点は, 一般に日本人学生群の名詞の意味には価値評価がより多く含まれていること, 10個の名詞のうちのあるものは, 第II因子においてその負荷量が逆の方向になることなどにみられ, このことは意味構造として英語名詞の意味を考えた場合にもその差が認められるということを示している。以上求められた日本人学生の学習した英語単語の意味の差が, 何に起因しているかを明らかにしてゆくことと分析方法について検討すること, が今後の研究の問題となる。

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© 日本教育心理学会
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